ナトリウムイオン電池は、充電可能な電池の一種で、電荷のキャリアとしてナトリウムイオンを利用します。リチウムイオン電池と類似の原理で動作しますが、リチウムの代わりにナトリウムを使用します。
【ナトリウムイオン電池の主な利点】
* 豊富な資源と低コスト: ナトリウムは地球上に豊富に存在し、海水からも採取できるため、リチウムよりも資源の偏在性が低く、安価に入手できる可能性があります。これにより、電池の製造コストを低減できると期待されています。
* 高い安全性: 一般的に、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池よりも熱暴走しにくく、発火のリスクが低いとされています。エレコムが発表した世界初のナトリウムイオンモバイルバッテリーに関する報道では、釘を刺す実験においてリチウムイオン電池が爆発したのに対し、ナトリウムイオン電池は変化がなかったと報告されています。
* 広い使用温度範囲: ナトリウムイオン電池は、低温から高温まで、より広い温度範囲で安定して動作する可能性があります。
* 急速充電性: リチウムイオン電池と同等、あるいはそれ以上の速さで充電できる可能性があります。
* 環境負荷の低減: コバルトやニッケルといった希少金属の使用量を減らすことができるため、環境負荷の低減に貢献する可能性があります。
【ナトリウムイオン電池の主な課題】
* 低いエネルギー密度: 一般的に、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と比較してエネルギー密度が低いため、同じ体積や重量で蓄えられるエネルギー量が少なくなります。
* サイクル寿命: 現在のナトリウムイオン電池のサイクル寿命は、一部のリチウムイオン電池と比較して短い傾向があります。
* 大型化・重量化: エネルギー密度が低いことから、同じ容量を実現する場合、リチウムイオン電池よりも大きく、重くなる傾向があります。
* 技術開発とサプライチェーン: ナトリウムイオン電池はまだ開発段階であり、リチウムイオン電池に比べて技術的な成熟度やサプライチェーンの整備が遅れています。
【ナトリウムイオン電池の応用】
資源の豊富さや安全性といった利点から、ナトリウムイオン電池は以下のような用途での応用が期待されています。
* 定置型蓄電池: 家庭用や産業用の電力貯蔵システム、再生可能エネルギーの貯蔵など。
* 低速EVや電動二輪車: 航続距離よりもコストや安全性が重視される用途。
* モバイルバッテリー: エレコムが世界初の製品を発売しました。
* 産業用途: フォークリフトなどの産業車両。
【技術開発の現状】
現在、世界中でナトリウムイオン電池の研究開発が活発に進められています。正極材、負極材、電解液など、様々な材料や構造に関する研究が行われており、エネルギー密度やサイクル寿命の改善が進んでいます。
中国のCATL(寧徳時代新能源科技)は、電気自動車へのナトリウムイオン電池の搭載を世界で初めて実現するなど、実用化に向けた動きも出てきています。